LosSantos AutoMagazine

GTA5PC版初心者が書くGTA内の車を取り扱う自動車情報サイトです GTA5にてadd-onで追加できるバニラワークスの車とDLC新規追加車両を中心に現実の車情報誌と同様にレビューして参ります。 モデル車両とのスペックや史実との乖離はご容赦ください。

FF車世界最速へ…日出ずる国の生み出した究極のホットハッチ 2017年式 ディンカ ブリスタ・スゴイ

ディンカ ブリスタ・スゴイ

f:id:hassan114514:20220312140322j:plain

私がイギリスに住んでいた高校生の頃、私を含む車好きの若者たちは皆ホットハッチと呼ばれるスポーツチューンのなされたハッチバック車に熱狂していた。高い走行性能と実用性を備え、免許を取得したばかりの学生でも手が届くような低価格というまさに最強のスポーツカー。70年代にBF クラブから始まったホットハッチの流れは瞬く間に全世界へと広まり、その波は地球の裏側にある日出ずる国、日本にも到達した。

当時、日本では小型ハッチバックが大衆車として多く販売されており、カリン、アニス、マイバツの三大メーカーがしのぎを削っていた。そんな中ディンカはアーバンターボという車を発表。1.2Lターボチャージャー付で110psを出すアーバンターボは三強を打ち倒し、絶大な人気を誇る車となった。その後もディンカの躍進は止まらず、ブリスタコンパクトはFFのライトウェイトスポーツとして北米で大ヒットした。

f:id:hassan114514:20220312140317j:plain

そしてディンカの一番の功績と言えば当時国民車ともいわれるほどヒットしていたブリスタに1.6L 直4DOHC 可変バルブタイミング機構(通称VTES)を搭載したブリスタ・カンジョを発表したことだ。この車は日本専売であったものの海外にも多く並行輸入され今現在もファンが多い。

f:id:hassan114514:20220312140319j:plain

カンジョは日本の走り屋スタイルのカスタムが流行し、集団で高速を周回する人々も現れた

その後もディンカはブリスタのホットモデルを発表し続けていたものの、世界的不況と排ガス規制により2010年モデルからホットハッチモデルが消滅してしまった。

2010年発売の9代目ブリスタは実用的な低価格ハッチバックとして商業的には大成功を修めたものの、私たち車好きにとってスポーツモデルが設定されていないブリスタは面白みの欠片もないクルマとなってしまった。ディンカから車に対する熱い想いは失われたと思った。

f:id:hassan114514:20220312140315j:plain

 

しかし、ディンカはホットハッチへかける情熱を失ってしまったわけでは無かった。2016年、パリにおいて発表されたブリスタの新たなスポーツモデル、スゴイはその名の通り、『凄い』車だった。

2017年4月、北ドイツの名門コースニュルブルクリンクにおいてタイムアタックが実施された。当時FF市販車で最速だったBF クラブの最速記録を3秒以上も上回り、世界最速の市販FF車の称号を獲得した。(現在はボルドー アニーがその記録を上回っている)

そんな世界最速のFF車(”元”ではあるが)の試乗を行いたいと思う。

f:id:hassan114514:20220312140324j:plain

f:id:hassan114514:20220312140327j:plain

f:id:hassan114514:20220312140329j:plain

スペック
全長:4560mm
全幅:1875mm
全高:1435mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:1390kg
エンジン:2.0L 直4 DOHCターボ VTES
排気量:2000cc
最高出力:320hp/6500rpm
最大トルク:40.8kgf・m/2500‐4500rpm
トランスミッション:6MT

 

ロー&ワイドなスタイリングは非常に特徴的でアグレッシブさを感じる。ただ昨今の日本車全てにおいて言えるのだが、ゴテゴテと派手さが行き過ぎているデザインとも感じられる。日本ではロボットのアニメーション作品が流行っているのだと聞くが、それが車のデザインにまで影響してきているのだろうか。ボンネットには大きなエアベント、大開口のフロントバンパー、2本出しセンターマフラー、リアにはディフューザー。そして極めつけは巨大なリアウィングだ。アニス エレジーRH8やカリン クルマもそうだがどうして日本車の高性能スポーツカーには巨大なウィングが装着されるのであろうか…

f:id:hassan114514:20220312140331j:plain

f:id:hassan114514:20220312140334j:plain

そんな派手な外装とは対照的に、内装は非常にすっきりかつスポーティーになっている。日本車特有のチープ感は感じられるが、ディレタンテやピナクルよりずっと上質だ。リアシートも広々としていて快適で、実用性がとても高い。さらに日本車特有の収納スペースの多さも実用性のプラスポイントとなっている。自動販売機でついついeコーラを40本買ったとしても車内の収納スペースに全て収まるだろう。

f:id:hassan114514:20220312140300j:plain

スポーツカーと思えないほどに広々としたトランク。
投げ捨てるためのトノカバーも用意されている。

エンジンは2.0L 直4 DOHCターボ VTES。ディンカ伝統のVTESエンジンは健在だ。

VTESを知らない車好きはいないだろうが、一応説明を挟むと、ディンカが開発した4サイクルエンジン用の可変バルブタイミング機構のことで、低回転から高回転までそれに見合うバルブ制御が行える高度な技術であり、さらに力強い加速とレスポンスの良さ、そして素晴らしい音を響かせる車好きを虜にするエンジンだ。

ターボが搭載されることで高回転域で奏でられる自然吸気特有の音が失われてしまっているのは少し物寂しいものだが、ターボ化により最高出力は320psに達し、性能は大幅に向上した。

f:id:hassan114514:20220312220913j:plain

スタータースイッチを押し、エンジンをかける。野太いエキゾーストを轟かせて始動したエンジンはそれだけでしっかりとしたチューニングが施されていることが分かる。

スポーツシートのホールド性は抜群だ。しかし低速域ではあまりにも乗り心地が固くクラブやフラッシュには快適性で遠く及ばない。しかしそんな低速域での快適性の低さが気にならないほどに高速域での走りは素晴らしい。

f:id:hassan114514:20220312140308j:plain

高速域ではまるで地面に吸い付いているかのように走る。試乗した日は大雨であったが、こんな日にコメットやトラクスを全開走行できるのは頭のねじが数本抜け落ちた人間か自殺志願者のみだ。しかしスゴイはこの土砂降りの中でも全開で走行ができる。オーバースピード気味でコーナーに突っ込んでも挙動を全く崩すことなくきれいに曲がる。理想的なコーナリングだ。それだけでディンカの技術者は最高の仕事をしてくれたことが分かる。特にマニュアルトランスミッションは史上最高と言ってもいいほどで、ヒール&トゥいらずで回転を合わせてくれるレブマッチ制御を作り上げたことはもはや変態の所業だ。そして何よりもこの車は、速い。速いのだ。

f:id:hassan114514:20220312223845j:plain

これまでのスポーツモードからR+モードに切り替えるとカリカリのサーキット仕様にばけ、より繊細なステアリング捌きを要求される。流石に恐怖感があるのですぐに切り替えるが、FF車最速の理由を一瞬だけでも感じ取ることができた。この走りにはまさにワサビのような鋭さがある。カタログ値では272km/hも出せるそうだ。VTES特有の力強い加速とクイックに曲がるコーナリング性能はベストマッチ。ニュルで最速をたたき出すのも頷ける。

f:id:hassan114514:20220312140312j:plain

最速のホットハッチ。その記録は塗り替えられてしまっているが、この車は素晴らしい車である。この極上の速さはまさにレーシングカーだ。

しかしこれはスポーツカーというには少し疑問が残ってしまう。スポーツカーに必要なのはマシンをコントロールする楽しみなのではないだろうか。実際クラブやフラッシュには操る楽しさがある。記録を塗り替えたアリーはその操る楽しさを上手くコーナリングに落とし込み、少し滑らせることで向きを変え、アクセルとステアリングを連携させて走る。アリーが記録を更新できたのはその点にあるかもしれない。

スゴイは名の通り凄い車だ。速く、よく曲がり、よく走る。そして実用性も非常に高い。ホットハッチとしてこれほど素晴らしいものは無いだろう。しかしその”凄い”は私たち車好きが求めるものなのだろうか。私たちが求める”凄い”とディンカの考えた”凄い”は少しばかり異なっているのかもしれない。